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フッ・・・

第六十三話

石焼き

語り手:69 ◆RoVZy1UHxs

226 :69 ◆RoVZy1UHxs :2006/08/12(土) 03:15:14 ID:PULqPKlbO
【石焼き】

それは真夏の暑い日のことです。A君は中学三年生で受験勉強の真っ只中で、晩ご飯を食べおわるとすぐ塾の夏期講習で出された宿題をやっていました。
A君の家族は都営アパートに住んでいて、窓を開けながら勉強していました。すると季節外れの声が聞こえました。

「い〜し焼〜き…やぁ〜きたて〜ぇ〜…」

「まったく、こんな真夏のくそ暑い中、誰が買うんだよ。うるさくて集中できない。母さん静かにするように言って来てよ。」
しかし母親は黙ったままでした。話をまったく聞いていなかったというより、台所で夕飯の後片付けをしていたため聞こえなかったのでしょう。
しかし、いつまでも聞こえます。

「い〜し焼〜き…やぁ〜きたて〜ぇ〜…」

ちゃんとしたテープ使えよ。芋って言ってねぇじゃんか。自分で行くかぁ…

A君は家を出て階段を降りると、ヤクルトスワローズの帽子を被り黒のジャンパーを来た中年の男でした。

「すいません。今、僕は中学三年で高校受験の為に勉強に集中したいんで、早く移動して欲しいんですが。」

すると男はこう言いました。

「おぉ、すまんすまん。これはお詫びだ、受け取ってくれ。」

と、包まった暖かそうな新聞紙を差出しました。受験生ときいてわざわざ気を利かせてくれたのだろうと、暑いながらもA君は受け取りました。
しかし、次第に湿ってきて何が入っているのか新聞紙を開いてみました。
すると、新聞紙には焼きただれた母の首が入っていました。
男の顔を見ると、焼きただれた父の顔でした。

「うわぁっ」

と言う声とともにA君は起きました。
「何だ夢か…はぁ。でも何か気になるな。」
時間は深夜2丁度でした。寝汗びっしょりのA君は、涼みに外に出ることにしました。
すると、都営アパートの隣の階段で火の手があがっています。走って家に戻り、両親を起こすとすぐ非難したそうです。

【完】


フッ・・・