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第二十三話
離人症の夢
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語り手:夢 ◆/s.FUYMIrk
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200 :夢 ◆/s.FUYMIrk :2006/07/23(日) 00:49:15 ID:Ter4dLcwO
では23話いきます。
私は少し前から、離人症に陥ることが多くなりました。
みなさんも経験したことがあるでしょう?
世界が薄く膜を隔てた向こう側にあるような、全てが夢の中であるような、現実感の欠如。
多くの人々のそれは幼少期で終わるようですが、私は違いました。
ある時期から唐突に、私は正しく世界を認識出来なくなったのです。
自分の手ですら、「ほんとう」だと信じられない。
――えぇ、今も、です。
201 :夢 ◆/s.FUYMIrk :2006/07/23(日) 00:50:09 ID:Ter4dLcwO
そのある時期と重なるようにして、私は奇妙な夢を見るようになりました。
どこか広い部屋の真ん中で、小さな女の子が人形を抱きながら泣いています。
その女の子の皮膚も髪も透けるように白く、涙に濡れた瞳だけが赤く染まっています。
その夢に恐怖は一切なく――、ただただ、悲しくなるような夢でした。
その夢から目覚めた後、私はいつも泣いています。
あの女の子が幸せでないのが、悲しくて。
202 :夢 ◆/s.FUYMIrk :2006/07/23(日) 00:51:29 ID:Ter4dLcwO
けれども最近、離人症の悪化と共に夢に変化が現れ始めました。
女の子の涙が、少しずつ止まってきたのです。
私は喜びました。
たまらなく嬉しかった。
あの子が抱えていた透明な悲しみが、空気へ消えてゆくのです。
あぁ、それはなんて幸せでしょう!
この現実感を失った世界のことなど、もう私にはどうでもよいのです。
あの子が泣かなければ。
あの子が幸せであれば。
あの子が笑っていれば。
そう、例えその笑顔が残酷なものであったとしても。
私のこの瞳が、光を失いつつあったとしても――。
【完】
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