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第八十八話
コンプレッサー
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語り手:ふぃぐらし ◆pOljW.VcyA
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431 :ふぃぐらし ◆pOljW.VcyA :2006/07/23(日) 05:18:35 ID:Vt3rb8bB0
第八十八話 コンプレッサー1/2
ウチの地下室の部屋には、
仕事に使われる大形のコンプレッサーが一台置かれている。
親父からは、安全上の問題もあるのだろうか、
小さい時からそこには近寄らないように言われていた。
というか、俺はこのコンプレッサーが大嫌いだった。
一種のトラウマにも近いものがあった。
小学校、2年生の時ぐらいだったろうか。親が仕事中に、
一回だけワクワクしながら探検気分で地下室に降りて、部屋を覗いたことがあったんだ。
小さな、草に隠れた明かり窓から光が漏れている程度で、
中はそんなにはっきりとは見えなかったが、
黒の、機械音を発しているゴツい機体を確認した後に、
俺は更に、地下室に立ち入るという衝動に駆られていた。
その時。コンプレッサーが動き始めたのだ。
突然の、独特のドルルルルルルンという音に恐怖し、瞬間的に後ずさりした。
(この時少し失禁してたかもしれない。w)
壁際にへたり込んだ俺は、
地下室の中に、確かに何かが蠢いているのを見ていた。
432 :ふぃぐらし ◆pOljW.VcyA :2006/07/23(日) 05:19:40 ID:Vt3rb8bB0
第八十八話 コンプレッサー2/2
明かり窓のわずかな光に照らされて、
黒いゴミ袋の様な物体が何かを発しながら、
床をズリズリ這いずり回っているのを、見ていた。
コンプレッサー音は止まらない。機械音と混じり、
とても低い声でその黒い物体が読経をしているようだった。
俺がその場から離れようとした次の瞬間
・・・どこから現れたのか、親父の罵声がいきなり飛んできた。
俺に平手打ちを一発喰らわし、地下室の鍵をぴしゃりと閉めてしまった。
その後はお説教。この時は怒られたショックと、
あの恐怖に臆さない親父に感心するばかりであったが、
数週間後、思い切ってあの物体の事、あの部屋の事を聞いてみたんだ。
全く答えてくれないんだよ。
地下室には近寄りたくないし、部屋の中を知りたくも無い。
だが、この親父のだんまりは現在も続いている。地下室の扉は閉まったままだ。
【完】
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